◆「よし、買う方向で。」図書館で本を1冊借りたその後…。
図書館での試練
今まで、タイトルや本の装丁が気になると、たとえ短編集でも順番を無視して借りていた。
そんな私に、試練がふりかかった。
「誰かが、この短編集を順番に借りている。」
と気づくのに、時間はかからなかった。
短編集1が抜けていた。
「誰かがこの本を気に入って、借りている!」
見返しに貼られている小さな茶色い封筒から図書カードを引き抜く。
自分の名前の近くに鉛筆で書かれた名前を見て、ときめきが湧く…
ということであれば良かったのだが、時代は令和である。
図書カードは紙製ではない。
図書カードは磁気性の自分持ちだ。
個人情報は「絶対守るもん」である。
誰が借りたかなんて絶対にわからない。
そんなことよりも、気になったのは
「これで、わたしが2を借りてしまうと、タイミング的にまずいのではないだろうか。」
ということだった。
まずさ、というかこの場合は気まずさだろうか。
でも、続きものではないわけだし、「まあ、いっか」と短編集2を借りた。
見知らぬ人との和睦
2週間後。
短編集2を読み終わり、図書館へ返却に行く。(私は読むのが遅い)
すると、短編集3が棚からなくなっていた。
「2がないから3へ飛んだのか?」
とたんに気まずくなった。
順番に読んでいった彼の人の思いが、静かに冷めていったらどうしよう。
この本を作った編集の方たちは、きっと
「物語のまとまり」とか、
「流れ」とか、
「著者の執筆年代」とか
を気遣って編集したかもしれない。
飛ばすことなど、考えられないことだったのかもしれない。
すくなくとも、彼の人にとっては。
なにせ自粛期間中である。
妄想の規模も、想像力の無駄遣いっぷりも大きいのだ。
ここで4を借りる気持ちにはなれない。
わたしは、見知らぬ人との和睦をイメージしながら短編集1を借りた。
短編集、お買い上げ
その後、順番に借りて短編集すべてを読み終わると本屋へ直行し、短編集全巻を注文してしまった。
本をまとめて買うなんて、何年ぶりだろう。
新しい本独特の、表紙を開くときの音。
真ん中あたりに、「し」の字に栞の跡がついたページ。
そして
「お前、こんな色してたのか。」
というツヤツヤの栞。
図書館の栞は、色あせて擦り切れ始めているのもあった。
それでも
「今まで借りてきた見知らぬ人たち」
「司書の方たち」
「丁寧に本を扱ってきたひとたち」
がいるから、
私はこの本と出会えたのだ。
◇最近気になる本屋さん(自分が住む町の本屋さんは貴重なのだ)
HiBARI BOOKS&COFFEE
ひばりブックス
https://hibari-books.com/
◇前から気になる本屋さん(いつもどおり、の空気感を大切にしてくれる場所は貴重なのだ)
水曜文庫
https://www.kosho.or.jp/abouts/?id=22000750
須藤萌子の銅版画、ドローイング作品、ワークショップイベントを紹介するサイトです。
こちらもご覧ください。
https://sudohoko2016.wixsite.com/sudohoko
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