◇第3部 ねえ、これ、どこのだれに言えばいいの?―展示の場で共有したい現実的な話―
「なあなあ」にしないために

年齢や性別に関係なく、許されないことがある
まず共有しておきたいのは、
年齢や性別、立場に関係なく、許されない行為は存在するということ。
「悪気はない」
「根はいいひとなんだよ」
「その人なりの距離感」
そうした言葉は、免罪符にはならない。
作家の時間、身体的・精神的な距離を一方的に侵害する行為は、
それが誰によるものであっても、線を引いてよい。
問題は相手の人柄ではなく、行為そのものだ。

「困った人」で片づけない
展示の場では、
「よくいる人」
「ちょっと困ったおじさん・おばさん※」
として処理されがちな存在がいる。
※ここでいうおじさん・おばさんは年配の人間に留まらない。
強いて言うなら「こちらのお願いをまったく受け入れてもらえない空気を纏っている人」に相当する。
しかし、名物人扱いやネタとして笑って流すこと、なあなあに対応することは、
その場は収まったとしても、次の被害を別の場所や人に生みやすくするだけ。
マウント、試し行為、支配的な振る舞いは、
年齢や性別を問わず起こる。
個人の性格の問題としてではなく、
展示会というしくみの中で起きやすい問題として捉える必要がある。

展示の場で線を引いてよいケース
展示中、次のような状況では、距離を取ってよい。
私的な質問が続く。(なぜ今日在廊できるか・できないかで仕事や家庭環境へ踏み込む場合も)
展示と関係のない長時間の雑談。
作品鑑賞ではなく、人生相談や自己語りがメインになる。
名前や立場を明かさない相手から、深い関係性を求められる。
「知り合い」「師匠」「団体名」を使って圧をかけられたり距離を縮めようとしてくる。
これらはすべて、
作家側が我慢して受け止める義務のあるものではない。

地方で体制が整っていない施設での現実
都市部のギャラリーでは、スタッフがいて助けを求めやすい。
というか、ギャラリーの数も来客の数も分母が大きい分、問題客の対応もこなれている。
(こなれているったって、作家や画廊が真に対応したいのは、普通のお客さんなんだが)
しかし、地方のレンタルスペースや公共施設では、来客対応はほぼ自分一人になることが多い。
- 逃げられない状況で困った人に遭遇
- 施設側も対策が十分でない場合がある
- 「穏便に」と言われても、作品や自分を守らねばならない
このため、展示前に想定シナリオや助けを呼ぶ方法を決めておくことが重要になってくる。
大げさだと思いますか?
でも、作家名やペンネームだとしても、こちらは会場で顔と名前と作品をさらしている。
相手へも、必要最低限の誠実さを求めることは決して大げさだとは思わない。
基本の考え方
誰かを排除するためではなく、自分と作品を守るため
失礼な行為は受け入れなくていい
「展示を見ること」を最優先に話を誘導する
怒る・論破する必要はない
若い作家・初めて展示をする人へ
なんか嫌だなと思ったら、会話が不自然に途切れようが離れていい。
展示は作家が我慢する場所ではない。
作品を守ることと、自分を守ることは同じだ。
「慣れてから対処しよう」
「今回は我慢しよう」
そう思っているうちに、
状況は深刻になりやすい。
困った経験は、決してあなたの落ち度ではない。

マニュアルとして残したい理由
この文章を書いているのは、誰かを糾弾したり排除したりするためではない。
展示の場で起きやすいこと、
その場で使ってよい言葉、頼ってよい場所があること。
それらを共有し、一人で抱え込まなくていいという感覚を残したい。
展示は、作品を見せるための場であって、尊厳を削る場ではないのだから。
さて、次はいよいよ対応の実践編である。
東京都内で活動するアーティストへの相談窓口ができたようです。
ハラスメント対策も入っているので気になる方はぜひ。
東京芸術文化相談センター アートノト
https://artnoto.jp/







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