◇展示現場で困ったとき―ギャラリーストーカー・迷惑客への現実的な対応実践編②チェックシート付-

はじめに
この文章は、特定の誰かを糾弾するためのものではありません。
また、特定の行為を即座に「危険」と判断するためのものでもありません。
判断材料を整理し、作家や場の管理者がひとりで抱えなくていい状態をつくること。
それが、この文章の目的です。
展示の場に立つと、作品そのものとは別のところで来場者との距離感に悩むことがあります。
それは「説明しにくい違和感」として現れることがほとんどです。
たとえば、
- 作品とは関係のない個人的な質問が続く
- 会話を終わらせようとしても、なかなか自分から離れてくれない
こうした出来事があっても、多くの場合、
「自分が気にしすぎなのかもしれない」と考えて、そのまま流してしまいます。
日本の展示現場で起きやすい構造

画廊やギャラリー、文化施設の多くは、「誰にでも開かれた場」です。
施設側はトラブルを避けたい立場にあり、作家は「場を借りている側」として一段弱い立場になりがちです。
そのため、違和感があっても、
- どこに相談すればいいのか分からない
- どの段階なら相談していいのか判断できない
という状態になりがちです。
これは、どちらかの意識が低いからではなく、
「判断の基準が共有されていない」ことによって起きている問題だと思います。
迷惑客は「事件名」ではなく、「行為の積み重ね」
いわゆる「迷惑客」や「問題のある来場者」は、
最初から分かりやすく危険な存在として現れることはほとんどありません。
むしろ、
- 一つ一つは説明しにくい
- しかし積み重なると、確実に施設や利用客の負担になる
そんな行為の連続として現れます。
ここで大切なのは、「危険かどうか」を判断することではなく、
**「展示や発表の場として管理しにくくなっているかどうか」**という視点です。
誰かを評価したり、断罪したりするのではなく、
起きた行為そのものを、静かに見ていく必要があります。
なぜ「記録」が必要なのか
記録という言葉に、少し身構えてしまう人もいるかもしれません。
けれど、ここでいう記録は、誰かを訴えたり責めたりするためのものではありません。
- 自分の感覚を、後から確かめるため
- 誰かに相談するとき、状況を感情にまかせて説明しないため
- 「一回だけではなかった」ことを整理するため
後から振り返ることができるだけで、気持ちの負担は大きく変わります。
今はまだ、個人が抱え込みやすい

作品を発表する場所はレンタルスペースや飲食店など、多様化し、年々増えているように感じます。
その割に施設側は、アーティストと来客の間に「どこまで介入すべきか」という明確な基準を持っていないことが多いのが個人的な印象です。
また、アーティスト側も、その場で過ごしてみないと身を守る判断基準を得にくいこともあるでしょう。
展示会場でいきなり迷惑行為をされて110番をしたり、施設警備員の人を呼んだりする自分の姿、想像しにくいですよね。
その結果、
- 問題が個人の中に留まりやすい
- 「我慢すれば済む話」になりやすい
という状態が生まれます。
これは個人の弱さではなく、仕組みがまだ追いついていないことによる孤立だと思います。
次の世代のためにできること
すぐに制度が変わるわけではありません。
けれど、違和感を記録し、言葉にする人が増えれば、
「これは相談してもいいことなんだ」
とアーティストと施設の双方が安心する場面は、少しずつ増えていくはずです。
若いアーティストや、初めて展示に立つ人が、説明しにくい違和感を抱え込まずに済むように。
そのための小さな準備として、記録や共有という方法があることを、ここに残しておきたいと思います。
★実践編:チェックシートの使い方

― ひとりで判断しなくていいために ―
ここからは、先ほど書いた「記録」について、
もう少し具体的な使い方を整理します。
これは対策マニュアルではありません。
「こうしなければいけない」という正解を示すものでもありません。
あくまで、判断材料を自分の手元に残すための方法です。
1.いつ使えばいいのか
チェックシートは、
「明らかに危険なことが起きたとき」だけのものではありません。
むしろ、
- ちょっと自分の心の中で引っかかった
- その場では流したけれど、後から思い出した
そんなときに使うためのものです。
その日のうちでなくても構いません。
展示が終わったあと、落ち着いてから書いても大丈夫です。
2.何を書けばいいのか
シートに書くのは、
気持ちの評価ではなく、起きた行為です。
「怖かった」「不快だった」と書けなくても、
- 長時間居座っていた
- 何度も話しかけられた
- 断っても会話が続いた
といった事実だけで十分です。
うまく言葉にできない場合は、チェックを入れるだけでも構いません。
3.その場で何もできなかったとしても
多くの人が、
「そのとき、もっとはっきり断ればよかった」
「スタッフに言えばよかった」
と後から自分を責めてしまいます。
でも、このチェックシートでは、
- 何もできなかった
- 流してしまった
という選択も、そのまま記録します。
その時点での行動は、その人なりに場を守ろうとした結果だからです。
4.1回では判断しない、をルールにする
このシートで大切にしている考え方があります。
1回では判断しない。
似たような出来事が、
- 2回あったら「記録しておいてよかった」
- 3回以上続いたら「誰かに相談してもいい材料がそろった」
それくらいの距離感で見てください。
これは、いきなり「危険かどうか」を決める基準ではありません。
「ひとりで抱えなくていいかどうか」の目安です。
5.誰かに見せる必要はありません
このチェックシートは、
- 自分のためだけに使ってもいい
- 誰にも見せなくてもいい
ものです。
もし施設やスタッフに相談する場合でも、
- 原本は自分で持つ
- 要点だけを伝える
それで十分です。
「これまでに、こういう行為が何度かありました」
と説明できる材料があるだけで、話はずっとしやすくなります。
6.このシートが目指していること
このチェックシートは、
- 行動を指示しません
- 決断を代行しません
- 正解を押しつけません
代わりに、
「自分の感覚は、記録していいものだった」
と確認できる場所を作ります。
それだけでも、展示に立つときの心の負担は少し軽くなります。
おわりに
「ギャラリーストーカー」とは、性別、年齢、立場に関係ない。
アート発表の現場に来訪しては、作家と面識のある・なし
に関わらず「粘着質」で、「ハラスメント発言、行動」を
自制なく作家へ行う人物の総称である。
「作家の創作意欲をはじめ、他の鑑賞者が作品を前に本来得るはずの時間と場を阻害し、
ひいてはその地域の文化を損なう行為」をしている者である。
決して作家、施設側、施設利用者側が存在を諦め、慣れてはいけない。
と、私は考えます。

※上記のシートは、作家側、展示施設側のどなたも平均的に使えるような内容に留めてあります。
あなたにとって今後もよい展示が開催されますように。






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