◆『ぼくは本屋のおやじさん』 早川義夫(著) ちくま文庫
じぶんの「やりたいこと」「やりたくないこと」が、よくわからなくなったときに出会った本
『ぼくは本屋のおやじさん』との出会いは、とある喫茶店のカウンターの本棚から偶然手に取っただけなのだけれど、
「まさに今、こういう本を読みたかった。」
という内容で、ちょっとびっくりしてしまった。
まさに今、とはどういう状況かといえば、ここ数年のわたし自身が、
制作や発表をしてきたこと、
制作と並行して別の仕事をしていたときのこと、
出会った人やモノゴトなんかが、うまく頭の中で整頓できなくて
「苦しいなー・・・。」
と思っていた状況だった。
同期の作家にボヤくのも、相手の足をひっぱるような行為のようで情けない。
よくダメ出しをしてくる年配作家氏に相談するのも、何かちがう。
だってみんな忙しいし、大変ではないか。
それぞれの修羅や、ひとりぼっちの感覚はちがうから、「どうやったら伝わるか」から考えだすと更に苦しい。
そんな「アタシハチガウ」と、変に意地を張っていたら
「気軽に会いに行ったり来たりが難しい世の中・2020」
になってしまった。
困った。
そこへ、早川さんの『ぼくは本屋のおやじさん』である。
その場で読むと、顔に出てしまって、とても店内でコーヒーを飲みながらすまして読めそうにない。
(声も出てしまいそうだったし。)
※ちなみにその喫茶店は、とても良心的なシステムで店内の本を借りられる。だけど、なんだかこれは自分の手もとに置いておきたくなる1冊になるに違いないと確信。結局、帰り道にある本屋さんで買ってしまったのだった。
(その本屋さんも、ちょうど自分が思い詰めているものが棚にある素敵なお店なのである。)
「もうちょっと続けてみよう」と思えるくらいの苦しさなら味わえる
『ぼくは本屋のおやじさん』には、著者である早川さん自身が、20代で小さな書店を始めた日々の奮闘がつづられている。
奮闘の内容は、ここで詳しくは述べないけれど、
営む書店で勃発する出来事や、その出来事への早川さんのもどかしい気持ちが伝わるたびに
「楽な仕事なんてないんだよなあ」
と、こちらを正気にさせてくれるのがいい。
単純に、タイトルと繋げて流し読めば、
「須藤さんは絵を描くのを辞めて、本屋さん(別の職業のひと)になりたいの?」
となりそうな気もするけれど、ちがいます。(笑)
「ああ、もうちょっとこの仕事をつづけてみよ。」
と、勇気がわいたのです。
会ったこともない著者や、経験したことのない職業の方からヒントをもらいながら、いままでのことを答え合わせしていくようだった。
仕事や暮らしのなかで、違和感を覚えたり、悶々と考えたりすることは、「わたしにとっては必要なことなんだなー」と納得できたのもよかった。
◆この本が気になった方はこちら
ぼくは本屋のおやじさん (ちくま文庫)
◆ふらりと入って目の前に気になる本と出会えたお店
HiBARI books&coffe
https://hibari-books.com/
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