◆須藤萌子の銅版画解説 『海の骨』 オンライン常設展-Square-にて展示中
海の骨
「海の骨」は2009年の制作。
暗い海のなかで、何かが漂っている。
漂う、とか、横たわる、という表現が好きなのかもしれない。
おそらく、自分がうまく漂ったり横たわったりすることが「できない」人間だからではないだろうか。
子供のころ、旅先で家族と旅館へ宿泊。
そこから目と鼻の先にある駅構内に、朝刊を買いに行く、というお使いが怖くて泣きながら拒否した。
目的もなく散歩を楽しむ、とか、初めての場所でもくつろげる、という余裕も自信もない。
銅版画の一連の制作工程が、内に籠るというか、ひとりで没入してイメージの中をウロウロできるというところがとても気にっている。
タイトルに使う言葉
海に骨なんてない。
一時期、モチーフや、テーマや、タイトルの意味なんかを
「家族にも、誰にも聞かれたくないし答えたくない」
という時期があった。
聞かれるであろうし、答える機会がある個展をしているのにもかかわらず、だ。
言葉にならないものを形に込めているのに…
形にしたら、
今度は言葉になおして説明してくれ
と言われるのは矛盾がある、と感じていた。
一生懸命質問に答えても、聞かれた相手からどこか不満げな顔をされるのが苦手だった。
地方の新聞取材にも、決められた取材時間や文字数に対し、言葉にしてうまく伝えられないない。
これが災いして、翌日載った記事を見て、自己嫌悪に陥ったことが何度もある。
そんなとき、あたまの中で思いつく限りの「怖い言葉」を並べて抽象表現作品のタイトルにする。
すると、ちょっと落ち着く自分がいることに気づく。
タイトルは、私の中でお守りというか意思表示みたいなものなのだ。
須藤萌子の銅版画、ドローイング作品を紹介するサイトです。こちらもご覧ください。
『須藤萌子 版画とドローイング』
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