◆名画をゆるく模写 『シャユ踊り』 ジョルジュ・スーラ 『2022年ゆる模写カレンダー』7月

2022年10月7日

『シャユ踊り』 ジョルジュ・スーラ
『シャユ踊り』 ジョルジュ・スーラ

名画を「ゆるく」模写してカレンダーにしてみた

『2022年ゆる模写カレンダー』 7月

  『シャユ踊り』

原作者 ジョルジュ・スーラ

制作  1889-1890年

所蔵 オランダ クレラー・ミュラー美術館

効果を計算して描かれた無数の色の「点」

点描(てんびょう)、といえば、スーラ。

絵の具をパレットで混ぜずにキャンバス上へ点を並べて描くことにより、
離れて絵をみたとき、並べた色同士が混ざったように見えます。

これは、ただやみくもに点々と描いていくのではありません。
色の並び方、見え方を計算して描いていく技法で「分割筆触」といいます。

以前、これとは別の作品ですが、美術館で実際にスーラの絵を見たときは圧倒されました。

画面に描かれた点の多さもさることながら、
少し離れて見たときの画面の色合いの気持ちよさ。
近づいてみたときの「こんな色が入っていたのか」という驚き。
角度や距離を変えて見ることで、何度も楽しめました。

時間が止まったような、静かな雰囲気

細かく手描きで打ち込まれた点によって表されるダンサーたち、楽器を演奏する人。

ダンスで足を高く上げた瞬間、音楽が流れている瞬間を、無数の点によって止められたようです。

それでも、分割筆触という技法の効果なのでしょうか、
描かれたナイトクラブは今、まさに、浮かれ、盛り上がっているように感じられます。

線の向きや、似ている形の繰り返しで見えてくるリズム

ゆる模写をしていると、じっくりと画集を見るようになります。
もしかしたら、普段美術館で対峙している時間よりも長く作品を見ているかもしれません。

すると、面白いことに気が付きます。

画面右側に、女性と男性のダンサーが交互に並んでいるのですが、
よくみると、足がみんな同じような形に描かれています。

「あれ? 男性は燕尾服っぽいのに、足元が女性っぽく統一されている???」

斜め上に高く上げた、ダンサーたちの足と似た角度で、
コントラバスや、弦楽器の弓、フルート、指揮棒が描かれています。

このようなモチーフ同士の共鳴が、画面の中に散りばめられているのです。

いちばん前にいるダンサーの持つ扇子と、右下客が持つ杖の角度。
ダンサーたちの跳ね上がった唇やひげと、客の唇の形。

線の向きや形の繰り返しを使うことで、リズムをうみ出し、
色彩の効果以外にも、ウキウキする空気やリズムを表現することに成功しています。

どんちゃん踊り?

シャユ踊り、とは過激なカンカン踊りのこと。

場面がナイトクラブということと、客の頭上にあるステージで踊るダンサーの衣装などを見て、
なんとなく察してしまうあなたはオトナ、です。

学生の時に見た画集では、タイトルが「どんちゃん踊り(騒ぎ?)」と表記されていたような気がするけれど、
どんちゃんて…今の時代通じるのだろうか。

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