◆紙の蝶 100羽日記 ⓸
対話の蝶番が外れたまま進む
版画を制作しています、と自己紹介をしたあと、
決まっていくつかの質問を受けます。
「どんな作家が好きですか」
「この作家は知っていますか(知り合いですか)」
「どうやって作るのですか」
その場では答えるのですが、あとになって、
相手の表情に、どこか腑に落ちないものが残っていることに気づきます。
こちらの答えが、うまく届いていないような、
あるいは、最初から用意されていた“正解”と少し違っていたような。
好きな作家や影響を受けた作品は、いくつもあります。
けれど、それらはひとつの名前で言い切れるものでもなく、
今も増え続け、揺れ続けています。
制作の方法についても、言葉にすればするほど、
こぼれ落ちてしまう部分が多くなってしまう。
説明を尽くしたあとで、なぜか申し訳ない気持ちになることもあります。
年々、わからないことは増えていきます。
それでも、手を動かすことだけは続いている。
ときどき私は、行きずりの相手によって、
答え合わせに指名された居残り生徒のようだ、と思うことがあります。
正しい答えを出すまで帰してもらえない教室にいるような。






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