◆紙の蝶 100羽日記 ⓺
創作中に私が繋ぎとめておきたいもの
創作中に自分が繋ぎ留めたい言葉を、蝶たちの裏側へ書いてみる。
取り留めのないものを、なんとか近い言葉に当てはめて、
100羽に向けて描く蝶に書く。
・honest-誠実
・pilot-水先案内人
・Luminous-灯
・inspiration-ひらめき
…等々
言葉は、ひらひらと飛び回る
そっと捕まえないと、指先に鱗粉を
残したまま、どこかへ去って
行ってしまうようだ。
題名をつけることは、ひとまず「fix」の意味を持つ。
20代の頃の私は、展示期間中の在廊で、お客様からかけられる言葉に激しく一喜一憂していた。
今思えば、相手は気軽に聞いているのだから、その体で返せばよかったのだと思う。
けれど当時は、ひとつひとつをまともに受け取ってしまっていた。
制作を続けるなかで、考え方は少しずつ変わった。
たとえ似通って見える作品であっても、人にたとえれば双子に同じ名前をつけないように、
タイトルは作品や鑑賞者のためというより、作家自身のためにあるものだと思うようになった。
言い換えれば、ひとつひとつを「ここで決める」と定めるための行為。
だから私にとって題名は、ひとまずの「fix」なのだ。
当時よく受けた質問のなかで、いまでも印象に残っているものがある。
技法でもなく、モチーフの説明でもなく、
「題名」についての問いだった。
二つ並んだ抽象の版画を指して、
「タイトルはいつの段階で、どうつけるのですか」と聞かれたときは、まだ答えられたと思う。
けれど続けて、
「どちらも同じように見えるけど」と言われたとき、
私は「そうですか……」と曖昧に笑うことしかできなかった。
いまなら、もう少し違う返しができる。
100羽完成に向かって描きながら、
どこかで、あの頃の自分に手を貸しているような気がしている。






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