◆『美しい痕跡』ー手書きへの讃歌 フランチェスカ・ビアゼットン(著) みすず書房

2021年6月15日

『美しい痕跡』
タイトルそのままをあつらえたような表紙

手書きの文字を見る機会が少なくっていると嘆かれる今。
ありがたいことに「どちらも使える楽しさ」を味わっている。

『美しい痕跡』は、装幀と、タイトルに一目ぼれして買ってしまった一冊。

手書きで文字を書く

という行為についてやさしいまなざしを注ぐ、イタリアのカリグラファーのフランチェスカ・ビアゼットンからのメッセージがつづられている一冊。

カリグラファーを日本語に直訳すると
「西洋書道」
が一般的なのだろうか。
わたしたちが義務教育上で触れてきた、毛筆や、硬筆(鉛筆)を使用する書道の西洋版である。

「美しく書く」という行為は、文字の形や、書き記していく道具が違えども、その国の文化を包み込んだまま、境目を越えて、どこか親しみを感じさせる。

姿勢と呼吸が大事なのだ

この本を読んでいて興味深かったのは、書くときあなたはどういう状態であるかをまず気づかせてくれた言葉が散りばめられていたことだった。
それはかつて、仕事で心身がボロボロだったときに出会った師匠(居合いを20年続けてた人)と同じことを言っていた。

姿勢と呼吸

にわかの自分が書くと、なんだか胡散臭くなるが、
制作で細かい線を描くときに足を組んで、息を止めながらだと、
線がぐらついて、なんとも落ち着きのないものになった経験がある。
ささくれていた気持ちでしたためた手紙も、同じように文字がぐにゃぐにゃした感じになる。

若いときは勢いでねじ伏せたりできよう。
だが、継続して美しい形や線をかきたいと思うなら、原点はおそらく「姿勢と呼吸」なのだと思う。

◇書く楽しさの根源に触れる一冊
美しい痕跡 手書きへの讃歌

書評

Posted by suho