◆メイキング【版と装いⅣ】オリジナルのファッションコルセットができるまで
ファッションコルセット作家・四條夢美(kurue_mh)とのコラボ
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「1年に、1着つくる。」
簡単に聞こえるかもしれない。
それがどんなに苦しく、そして楽しい事か。
2021年は「2着つくろう」から始まりました。
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ファッションコルセット作家、四條夢美(kurue_mh)と銅版画家である須藤とのコラボ制作。
素材やアイデアを往復書簡のように幾度もやりとりし、私は、コルセット用の布地に下絵を描く。
その下絵の線の上へ、四條(kurue_mh)が刺繍し、1点もののコルセットに仕立てて行くのです。
この制作スタイルで6着目。
6年の歳月が流れました。
「死ぬかと思った!」生きていないと言えない、聞けない台詞
「毎年思うけれど、2020・2021は、特に感慨深かったなあ。」
2020年は四條が年明けから難しい持病で1カ月半、入院していました。
当時、見舞先で本人から聞いたセリフが、
〈四條〉「死ぬかと思った」
〈須藤〉「・・・。(絶句)」
彼女とコラボを継続させていいのか、無茶をさせないようにすべきか一瞬迷いました。
だが、生還した彼女はその後デッド・オア・アライブ(マジに)を経て、2020年のコラボ作品をきっちり仕上げてきました。
そして、2021年。
『2着作る』
という案でまとまった時、
「あ、この制作に関しては、今までと変わらずが良いのかも。」
と構えなおしました。
布地へ下絵を描く
「さて、今年(2021)はどうしようか?」
こんなふうに、初めは布地の色を決めるところから、なんとなく会話がはじまります。
今回は2着作る、という案が飛び出します。
ショート丈で、2着。
〈須〉「なんかこう、対というか、ニコイチというか。」
〈四〉「おそろい?」
〈須〉「うん。あと、コルセットって、年齢・性別関係なく身につけていいものだよね?」
〈四〉「もちろん!」
しばらくすると、四條から須藤のもとへ、コルセットの布が届きます。
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届いた布地は、すでにコルセットの形につなぎ合わされている状態です。
この展開図のような状態から、どうやって優美な形のコルセットになるのか、いまだに私にはわかりません。
須藤は、布地の色を見ながら図案の資料集めをします。
メインになる模様をスケッチブックへ何度か描いておきます。
その後、四條の丁寧なガイドを頼りに、布地へ一気に下絵を描いて行くのです。
背中や、腰に向かって、どんな模様が見えると楽しいか悩みます。
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前は金具、後ろは、リボンで締めるから…。
悩みながらも、楽しいひと時です。
コラボがブラッシュアップ
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コラボを初めてまだ間もない頃。
抽象画ばかり描いていた頃の癖が抜けずに「こんな感じかな」と下絵を描いていました。
下絵が施された布地を受け取った四條と、度々こういうやりとりが…
〈四〉「刺繍していい、本当の線※1はどこなの?」
〈須〉「え?どの線も本当※2なんだけど?」
〈四〉「…(はぁ?)」
〈須〉「…(はぁ…。)」
このようなやり取りが、何度もあったのです。
※1本当の線、とは刺繍していく際に縫いつぶしていく実線のこと。
既に刺繍してしまった作品ばかりなので、例として初期の下絵を再現してみます。
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※2四條をキレさせ…もとい困らせた線を「どの線も本当(だから、どれも刺繍していい)」と須藤は言ったわけです。
この、途切れたり、はねあがったまま繋がっていなかったりする線でバラの花と蜥蜴を描いて送ったこともあります。
四條とは高校の美術クラスの同期でした。
「お互い、制作者同士、それくらいわかるでしょ?」
と、どこかでうっすら思っていたのかもしれません。
更に、美術クラス同期たちの最大の憂いポイントであったのが、双方の「ものの言い方」。
”須藤は廻りくどく、四條はストレート過ぎる”
始めた 当時、周りの同期たちは「まあ、モメルダロウ。」と憂いでいました。
しかし6着目(=6年目)ともなると、互いに意思の伝え方がブラッシュアップされてきました。
こうなると、ものづくりが、もっと楽しくなってくるのです。
まるで蔦が這うように
下絵が終わった後はずっと四條のターン。
まるで蔦が這うように…
コツコツと仕上げていく彼女の制作の日々。
作業の様子がメールや、SNSにアップされていきます。
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四條の制作進度を見るたびに
「まるで蔦が這うようだ。」
と思います。
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刺繍を終えた布は、様々な工程を経てコルセットへと生成されていきます。
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Lady bugs〈陽〉と〈月〉
さて、お披露目です。
2着のコルセットの名前は
『Lady bugs〈陽〉・〈月〉』
Lady bugsーテントウムシが、それぞれ麦の穂に添えられています。
しがみついている植物の茎を逆さまにしても、テントウムシは必ず上を目指して進みます。
太陽に向かって、良い方へ。
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完成画像を見て喜ぶわたしに、彼女は言います。
「世には、身体の形を上下に分ける勢いで砂時計型(!)にする本格的なコルセットもある。
けれど、このファッションコルセットは、普段のお洋服の上からちょっぴりオシャレしたい人の身体に寄り添いたい。」
と。
そして、やっぱりトルソ―と人の身体では、締め具合がちがうので
「早く人を締めたい」(言い方…他にないから仕方ない!)
だ、そうです。
作品発表と試着会を目指して
四條と須藤は、これまで制作してきたコルセットの発表や、試着会の実現を目標にしています。
今は、この状況の収束と、お互いの健康(特に四條!)を確認しあいながら手さぐりで進めていきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
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◆四條夢美 kurue_mh
ファッションコルセット作家。
小説や映画に出てくる時代衣装好きが高じ、個人ブランドで制作をはじめる。
注文主の体に沿って、しっかり締めることのできる 「お洒落着としてのコルセット」を提案。
採寸から布の断裁、仕上げまで、すべて四條ひとりの手によってつくられる。
稀少難病ミトコンドリア病患者。
「これしかやってないけど、ゆっくりでごめんね。」
という言葉とはうらはらに、今回のコラボ展では2着を仕上げた。
とにもかくにも、まず、彼女の生還に感謝している。
現在、コルセットのオーダーは「余裕をもってのご注文をお願いしています」
とのこと。
※2022年現在、オーダーは受付しておりません。
http://kurue-mh.tumblr.com
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◇コラボをはじめて間もない頃のふたりの一触即発?を綴った回は、こちら。
◆ふたり展【版と装い】
https://sudohoko.com/exhibition/
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/01/key.jpg?resize=260%2C347&ssl=1)
◆須藤萌子
銅版画作家。
静岡市内と都内で作品を発表。
ちょっぴり生意気・オトナカワイイ「絵本の挿絵のような」具象シリーズ、
故郷の湖からインスピレーション をうけた「湖を額装する」シリーズなど、
具象と抽象のあいだを巡るスタイルで制作している。
静岡市内のまちなかと、自身のアトリエにて少人数・予約制の銅版画体験ができるワークショップを開催。
刷りあげたときの達成感はひとしお。
現在、じわじわと「つくること」にハマる人を増やしている。
(現在も予約制で受付中。)
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HP
workshopにて最新の情報を投稿しています。
http://sudohoko2016.wixsite.com/sudohoko/
◇四條との、いままでのコラボについてはこちら
◆猫とわたし オンライン展覧会「版と装いⅡ」
https://sudohoko.com/cat-and-me/
◆メイキング【版と装いⅢ】オリジナルファッションコルセットができるまで
https://sudohoko.com/corset/
須藤萌子の銅版画、ドローイング作品を紹介するサイトです。こちらもご覧ください。
『須藤萌子 版画とドローイング』
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