◆名画を模写 『草上の昼食』エドゥアール・マネ 『ゆる模写カレンダー2021』 11月

2022年2月22日

『草上の昼食』エドゥアール・マネ
いつ見ても、ちょっとびっくりする

11月を飾るのは、『草上の昼食』エドゥアール・マネ

エドゥアール・マネの『草上の昼食』は、パリのオルセー美術館が所蔵しています。
オルセー美術館には1度行ったことがあるのですが、この作品を観た記憶がない…悔しいです。

1863年に208×264.5㎝の画面に描かれたこの作品、どのエピソードを切り取っても
マネにとっては運命の1枚だったにちがいありません。

印象派の父」「近代絵画の父」と、なにかと反逆的(のちに革新的)な冠がつくマネ。
裕福な法律家の家系に生まれ、7歳になるころには弁護士になることが義務付けられていました(!)。
そんな厳格な家庭で、お堅い少年時代を過ごしたマネが、どうして「印象派の父」「近代絵画の父」になっちゃうんでしょう。
初めはなかなか結びつかなかったのだけれど、51年の生涯を追いかけてみれば、節目節目に「反逆の精神」がちらつきます。

きっかけは、落選展…よりも?

1863年にサロン(今でいう公募展)に出品した『草上の昼食』。
控えめに言っても超保守的なサロンの審査によって、この作品は落選します。
でもマネ自身、この落選は想定内だったのではないかな、と、わたしは思うのです。

この年のサロンは保守の極みで、5000点の応募作品のうち半分以上を選外扱いしました。
そのため、ブーイングの嵐がおこったそうです。
そのブーイングの勢いは凄まじく、落選した作品を救うために、別の建物でそれらをすべて
展示するようナポレオン3世が取り計らったといいます。
どれほど怒りを鎮めるのが大変だったのかがわかります。
この救済展示が、世にいう「落選展」なのです。

しかし、この「落選展」がサロン本展より注目度が勝ってしまいます。
そのため、『草上の昼食』は、落選展をよく思っていない批評家、風刺画家から突っつかれました。
その結果、様々な人の目に「卑猥な絵」として印象付けられてしまいました。

アカデミックな表現(美術を学ぶ上で正しい、好ましいとされてきた表現)以外の、
「見慣れないもの」に対して、戸惑う気持ちも分からなくはありませんが…。

縦横2メートルの大きな画面のなかで、みんなが普通にピクニックしてる中で、
「女の人だけ裸って何なの…?」って、思う人もいるでしょう。
このモデルのポーズや配置が、
「実はイタリア・ルネサンス期の宗教画に使われていたんだよ」って、言われても
一般大衆への火消しとしては、パンチは薄い気がします。
教養人や、芸術を専門に学んでいた人だって、理解してもマネを擁護するかどうかは
また別の話、となりそうですし。
「これいいね!」と推してる一部の批評家もいたと思うんですけれど。


あまりにも厳しい評価。
今で言うと炎上、というのでしょうか。
ここまではマネ、想定していなかったのでは。

心が折れかけたマネは、スペインに逃げて行っちゃうくらいでした。
けれど、傷心旅行した先での食事が口に合わず、短期間で戻ってきたらしいです。

個人的には「心配して損した」感はあります。

ちなみにマネのお父さんは、この落選展での事件の前の年に亡くなっています。
厳格な家風によって、自分を押さえつけていた気持ちから解放されたマネ。
生涯困らないくらいの遺産を相続したおかげで、
絵が売れなくても自分の描きたい絵が描けるという立場になったマネ。
『草上の昼食』は、生まれるべくして生まれたという感じがします。

マネなら今の時代の展示をどう思うか?

そんなマネ、晩年の病の原因が「運動失調症」。
左足を切断する手術もしていたそうです。
もう少し健康に気を付けて、印象派の時代を軽く飛び越えて欲しかったです。


もし、今の時代にマネが生きていたら、今日でも美術作品の展示、
鑑賞に制限がかかるニュースを見て何というかしら、と想像します。

落選しようが、酷評されようが、自身の表現を追求して針路を変えないという
芸術家スピリットは「○○の父」に必要ですよね。

今、改めて気になる巨匠のひとりです。

人物を描きたくなった方はこちら
ハイパーアングルポーズ集 (集英社クリエイティブ)
運動不足のマネと一緒にやってみたかった
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作品ウェブサイト

須藤萌子の銅版画、ドローイング作品を紹介するサイトです。
こちらもご覧ください。
https://sudohoko2016.wixsite.com/sudohoko

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