◆須藤萌子の銅版画解説 『海の骨』 オンライン常設展-Square-にて展示中

2022年10月7日

『海の骨』
『海の骨』

海の骨

「海の骨」は2009年の制作。


暗い海のなかで、何かが漂っている。

漂う、とか、横たわる、という表現が好きなのかもしれない。
おそらく、自分がうまく漂ったり横たわったりすることが「できない」人間だからではないだろうか。

子供のころ、旅先で家族と旅館へ宿泊。
そこから目と鼻の先にある駅構内に、朝刊を買いに行く、というお使いが怖くて泣きながら拒否した。

目的もなく散歩を楽しむ、とか、初めての場所でもくつろげる、という余裕も自信もない。

銅版画の一連の制作工程が、内に籠るというか、ひとりで没入してイメージの中をウロウロできるというところがとても気にっている。

タイトルに使う言葉

海に骨なんてない。


一時期、モチーフや、テーマや、タイトルの意味なんかを
家族にも、誰にも聞かれたくないし答えたくない
という時期があった。

聞かれるであろうし、答える機会がある個展をしているのにもかかわらず、だ。


言葉にならないものを形に込めているのに…

形にしたら、

今度は言葉になおして説明してくれ

と言われるのは矛盾がある、と感じていた。


一生懸命質問に答えても、聞かれた相手からどこか不満げな顔をされるのが苦手だった。

地方の新聞取材にも、決められた取材時間や文字数に対し、言葉にしてうまく伝えられないない。
これが災いして、翌日載った記事を見て、自己嫌悪に陥ったことが何度もある。

そんなとき、あたまの中で思いつく限りの「怖い言葉」を並べて抽象表現作品のタイトルにする。
すると、ちょっと落ち着く自分がいることに気づく。


タイトルは、私の中でお守りというか意思表示みたいなものなのだ。

作品の購入は以下のサイトから
作品ウェブサイト

須藤萌子の銅版画、ドローイング作品を紹介するサイトです。こちらもご覧ください。
『須藤萌子 版画とドローイング』