◆名画をゆるく模写 『枢機卿の肖像』 エル・グレコ『2022年ゆる模写カレンダー』12月
『枢機卿の肖像』
原作者 エル・グレコ
制作 1600年ごろ
所蔵 ニューヨーク メトロポリタン美術館
モデルは実在の枢機卿…のはず
11月のゆる模写の集団肖像画とは打って変わって、これぞ王道のザ・肖像画、という1枚を選びました。
モデルは、実在の枢機卿で後のセビリーリャ大司教にまでなったフェルナンド・ニーニョ・デ・ゲバラとされていますが、別の大司教ベルナルド・デ・サンバドル・イ・ロハスの説もあります。
(じゃあ、一体誰なんだよといった感じですが…)
どちらにせよ、エル・グレコが描いた最高傑作のひとつであることには変わりない1点とされています。
枢機卿(すうききょう・すうきけい)とは、ローマカトリック教で教皇(法王)を選挙したり、補佐したりする聖職位のことです。
エル・グレコってどんなひと?
エル・グレコ(1541‐1614)はクレタ島生まれ。
イタリアで修業時代を過ごし、30代半ばでスペインに移住して画家として名声を得ます。
中世スペインの巨匠画家として知られているエル・グレコ。
縦長に引き延ばされ、歪んでる?と感じさせる人物描写。
ちょっと刺激的に見える色彩配置は情感たっぷり。
とにかくクセが強い。
この人の一生は、どこをかいつまんでも面白いというか、画風以上にクセが強いというか。
「彼についての記録資料がほとんど残されていない」と前置きされていたにもかかわらず、
高慢すれすれの高いプロ意識を持っていた…とか、
住んでいた大邸宅の家賃をめちゃくちゃ滞納(2年くらい)してた…とか、
言われてるのが面白すぎます。
生きても、亡くなっても、没後も
頭の回転も速く、プロ意識も高かったエル・グレコ。
当時、最大のパトロンだったスペインの王様から依頼された作品がボツになったエル・グレコ。
ボツを食らわせた王の愛顧を受けず活動場所をトレドに変え、金銭問題に付きまとわれるエル・グレコ。
たびたび依頼主と作品への支払いで揉めて、交渉の結果負けるエル・グレコ。
没後埋葬された修道院とのもめごとで遺骨をお引越しさせたら、引っ越し先の修道院が破壊されて遺骨はあとかたもないという説もあるエル・グレコ。
生前当初はあんなにもてはやされ、その後メチャクチャけなされた作風が、没後また再評価されるエル・グレコ。
まったくもって落ち着かない。
波乱万丈とはエル・グレコのためにある言葉なんではなかろうか。
エル・グレコの作品ってどこで見られるの?日本にもあるの?
エル・グレコの作品が最も集まっているのはスペインのプラド美術館や教会ですが、良作が一番見られるのはトレドだそう。
大聖堂のほかにもトレド市にあるふたつの美術館、エル・グレコ美術館、サンタ・クルス美術館は多くのグレコの作品が見られるとのこと。
クセの強い、炎が上へ上へ揺らめいているようなエル・グレコの画風。
スペインで見ると、ひときわ思うところが出てくるかもしれません。
日本では現在2点(!)エル・グレコの作品を見ることができます。
ひとつは岡山県倉敷市にある大原美術館、もうひとつは東京都上野の国立西洋美術館です。
数年前に倉敷へ、満を持して尋ねたら美術館は休館日。(満を持したのでは…)
会える日を楽しみにまたお出かけしたいと思います。
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