◆メイキング【版と装いⅢ】オリジナルファッションコルセットができるまで

2021年6月15日

ファッションコルセット作家・四條夢美(kurue_mh)とのコラボ
《コルセットができるまでを記録》

その1着が、できるまで

1年に、1着つくる。

簡単に聞こえるかもしれない。
それが、どんなに難しく、そして楽しい事か。
2020年は「難しく、楽しい事」を特に感じながら過ごした。

2020年コラボ作品「柘榴(ざくろ)と青い鳥」

ファッションコルセット作家、四條夢美(kurue_mh)と銅版画家である須藤との共作。
素材やアイデアを往復書簡のように幾度もやりとりし、1点もののファションコルセットを作る。

私は、コルセットの布地に下絵を描く。
その下絵の線の上へ、四條(kurue_mh)が刺繍してコルセットに仕立てて行く。

この制作スタイルで、すでに5着目。
5年の月日が流れた。

「うーん、感慨深い。」

普段、制作ばかりで、おざなりになりがちな記録とまとめ。
コルセットができるまでを時系列で追ってみた。

四條から布が届く

「今回のコルセットはどうしようか。」

こんなふうに、初めは布地の色を決めることから、なんとなく会話がはじまる。

しばらくすると、四條から須藤のもとへ、コルセットの布が届く。
A4サイズの封筒に入っていた布は、すでにコルセットの形につなぎ合わされている。
つなぎ合わされてはいるが、金具や骨も入っていないので、まだまだ厚みも重さも感じない。

コルセットになる予定の布
 2020年は深い緑色だった

この展開図のような状態の布地を見ても、これがどうしたらあんなに優美な形のコルセットになるのか、私には見当もつかない。

下絵として、スケッチブックなどの別の紙へメインになる模様を何度か描いておく。
その後、布地へ一気に描いて行く。
四條が、部位の向きや描きこんではいけない部分をきちんと細かく指示してあるので、安心して描いて行ける。

布だが、平面ではないところへ描く難しさ

ここが背中になるから、模様を避けて。
これが腰回りだから、模様をこう持ってきて…。
「うーん…」
と悩みながらも、楽しいひと時。

布とはいえ、最終的に人が装着するものになる。
平面とはまた違った気を使う。

冷戦時代突入か?

コラボを初めてまだ間もない頃。
油彩画専攻、しかも抽象画ばかり描いていた頃の癖が抜けずに
「こんな感じかな」
と下絵を描いていた。

下絵が施された布地を受け取った四條と、度々こういうやりとりがあった。

〈四條〉「刺繍していく線を見失うような下絵では困る。」
〈須藤〉「え、どの線が?」

〈四〉「どれが(刺繍していく)本当の線?」
〈須〉「え?…どの線も本当なんだけど?」

〈四〉「…(無言の、はぁ?)」
〈須〉「…(無言の、はぁ…。)」

上記のような、いえ、もう少しキツめのやり取りが何度かあった。

四條とは高校の美術クラスの同期。
「お互い、もの作ってるの昔から見ているし、それくらいわかるでしょ?」
って、どこかでうっすら思っていた。

更に、言い方である。
須藤は廻りくどく、四條はストレート過ぎる。

このコラボを初手から見守っていた周りの同期たちは、うっすらどころか

「大変危険である。」

と気づいていたそうだ。

ともあれ。
5着目ともなると、軌道修正や意思の疎通などもブラッシュアップされてきた。

柘榴(ざくろ)の模様を一面に

下絵を終えた夏

ここからは四條のターン。
というか、下絵が終わった後はずっと四條のターン。

作業の様子がメールやSNSにアップされる。

四條の確実な刺繍進度を見るたびに、
「まるで蔦が這うようだ。」
と思う。

縫い始め
だんだんと縫い進めていく
つがいの鳥部分
柘榴と鳥、縫い終り

平面から立体へ

専用の金具がついて、コルセットらしくなってきた

刺繍を終えたら、次はコルセットへ仕立てるために様々な工程がある。

前を止める金具
締めた時に体を支える骨(ボーン)
後ろで締めるリボンを通す穴あけ
彼女の身体から、どこにそんな力が?と思うような力作業が待っている。

コルセットの裏
リボンを通す穴に鳩目を打つ
リボンも布地の緑に合わせて

完成!2020コラボコルセット「柘榴と青い鳥」

コルセット正面
コルセット横部分に青い鳥がチラリ
バックスタイル

トルソ―(コルセットを着せているマネキンのこと)の腰回り部分にみえている白いレースにくるまれたものは、詰め物
締めた時のコルセットの形を、なるべく人体に寄せるように肉付けしている。

四條曰く、
「世には、コルセット専用のがっちり砂時計型(!)のトルソーもある。
けれど、ファッションコルセットで普段のお洋服の上からちょっぴりオシャレしたい人の身体をイメージするには、こちらで充分。」
なのだそう。

四條に今回のコルセットで見てほしいところを聞いたところ、
「柘榴を刺繍するときは、似ている色の糸を使って微妙に葉の色を変えて縫っている。」
また、
「連続して見える模様に変化があるように、縫い方も少し変えて工夫している。」
とのこと。

そして、
トルソ―と人の身体では、締め具合がちがうので

早く人を締めたい」(着せたいってことね!)

とのことでした。

作品ウェブサイト

須藤萌子の銅版画、ドローイング作品、ワークショップイベントを紹介するサイトです。
こちらもご覧ください。
https://sudohoko2016.wixsite.com/sudohoko