◆『聴く女』 トーベ・ヤンソン コレクション 8

2021年6月15日

タイトルにひかれて最終巻から読んでしまった

『聴く女』 トーベ・ヤンソン
トーベ・ヤンソンの短編集

外国では、ロックダウン前に長蛇の列ができた店舗の一つに本屋さんがあったそうだ。

確かに、「家で、ひとりで、おしゃべりも必要ない、一緒に過ごせる相棒」として、本はうってつけだ。
地元でも自粛期間中、多くの人が図書館へ本を借りに来ていた。
カウンター前の列に並んで知らない人の背中をぼんやり眺めながら、心の中で「なんとかこの期間をやり過ごそうね」と、自分にも前の人にも言い聞かせていた。

どうせなら普段読めなかったものを選ぼうか。
書棚をのぞきながら歩いていて見つけたのが、この短編集。

聴く女』 トーベ・ヤンソン

ムーミン一家でお馴染みの、トーベが書いた短編集。
原作のムーミン…あの、どこかサバサバとして他人に必要以上に介入しない雰囲気に近い。
いや、それよりも人間の気質やその土地の気候を、飾りけなく表しているように感じた。

全8巻のうち、なぜか8巻から手に取ってしまったのは、タイトルのせいかもしれない。

『聴く女』では、とある女性の変化を書いているのだが、その変化の描写にはっとする。
友人か、身内か、自分自身におきかえて、ちょっとの間落ち込むかもしれない。
ただ、その落ち込みは決してネガティブなことではない。
自分の中に翳り(かげり)というか、ちょっとの間「空っぽ」をつくる。
このことは、次に出会う人や、ものごとを迎えるための空間づくりに必要だと思う。

装丁の美しさにニヤニヤ

『聴く女』 トーベ・ヤンソン 表紙デザイン
表紙のデザインから

図書館で借りた本は、「公共のものなのできれいに扱おう」以上に感情を沸かせないようにしている。
だが、ひさしぶりに本への所有欲が湧いてしまった。
結局、本屋さんに頼んで『聴く女』を取り寄せてもらった。

手に入れた本を撫でさすり、しばしニヤニヤする。
図書館の本にはブッカーがかかっていて、わかりにくかった表紙のエンボス(紙の凹み)が愛おしい。

「これは、よい買い物をしたと思いますよ。」
と、本屋のご主人に言われたのを思い出し、またニヤニヤ。

さて、この子たちを収める場所をつくらねば。

徹底的に整頓してやる、と威勢がよかったのは最初の10分だけ

久しぶりに本棚を整理する。
本を本棚から出して床へ積む。
すると、不思議なことに収まっていた以上に本が溢れ、部屋の中を占領する。
早くもくじけた。

ひとまず、一番上の棚だけ短編集の場所を空けて、良しとした。
とにかく、はやく読みたい。

『聴く女』 見返しと栞
見返しのグリーンと、栞の薄桃色

表紙を開くと、見返しのグリーンがなんともいえない。
栞の色も、薄桃色でつやつやとしている。
ここ数年ハードカバーの本を買わなかったので、こげ茶色以外の栞の色はとても新鮮に感じる。

『聴く女』 花布(はなぎれ)
花布はゴールド

以前、美篶堂の製本ワークショップに参加したときに初めて知ったことがある。
ページと栞、表紙をつなぐクッションのような部分を「花布(はなぎれ)」と、いうそうだ。
この短編集、全8巻あるのだが、なんと栞と花布が巻ごとにちがう色で製本されている。
ちなみに、8巻の花布の色は金色である。

ウキウキして、なかなか本編へいけない。

いったい誰が、この変態的なデザインの装幀をしたのだろう。

巻末を見ると、装幀は・・・祖父江慎(そぶえ しん)とある。
さっそく検索する。

愛知県出身のデザイナー。
吉田戦車の漫画をはじめとしたブックデザインを…(以下略)

あ、なんだか妙に納得している自分がいる…。

◇吉田戦車デビュー、ぜひ。
伝染(うつ)るんです。(1)

作品ウェブサイト

須藤萌子の銅版画、ドローイング作品、ワークショップイベントを紹介するサイトです。
こちらもご覧ください。
https://sudohoko2016.wixsite.com/sudohoko