◆絵を展示するときの高さの決め方は?

平面作品を壁に展示するときに


自分で作品を展示をする際に、頭に入れておくと便利です。

平面作品がある程度「見やすいな」という感じに展示する話です。

展示作品の高さは?

一例として、床から垂直に145cmか~150cmの高さに、作品画面の中心
来るように展示するとします。

鑑賞する人の首が疲れすぎずに、目線の移動が自然におこなわれる高さの平均値ですね。

しかしこの作品と目線の合わせ方は、
展示をする空間・作品・鑑賞者、作家の意思によって変わるのが面白い。

お客さんがひしめくような企画展をする美術館では、
人の頭で画面が埋もれないようにちょっと高めに設定することもあるそうです(愛知県美術館参考)。

子供さんやご高齢の方が多い施設によっては、高すぎると見えにくい。

と、思えばサイズやテーマが重厚な作品にあわせて展示の位置を低めに設定したり。

展示作品の位置を算出


さて、自分で壁面に絵画作品を展示する方法です。

まずは、この図をご覧ください。

一般的に額装した絵画の裏面

一般的に額装がくそうした絵画作品の裏側の図です。

この作品を掛けるためのピクチャーフック、または釘を打ち込む位置を決めます。

今回は、例として地面から145㎝の位置に作品画面の中央がくるよう計算します。

がくの裏には、壁に飾るときに必要なかけひもを通す留具とめぐ(留め金具)が付きます。

緑色が、この作品画面の中心を通る線です。

しかし、掛ひも用の留具が画面中心とは異なる位置についているのと、

掛ひものたるみによってできた距離の分だけ、画面が沈み込んでしまいます。

この作品の場合、


① 作品外寸のタテサイズを半分に割った長さ〈B〉を出す

② 留具から、掛ひもを上へ垂直にひっぱった時できる頂点の位置から作品上辺までの長さ〈C〉を出す。

③ 〈B〉から〈C〉の長さをを引く

④ 画面の中心位置から測った、留め具から掛ひもを吊り上げたときの長さ〈d〉が出る。

⑤ 地面からの高さ145㎝に〈d〉を足したところが、ピクチャーフック、または釘を打つ位置となる。


以上が、壁に掛けたときに「作品の垂れ下がりを考慮した位置」の出し方でした。

額装しないタイプの平面作品です、って場合は…
作品画面の中心と壁に設置するときの道具、
鑑賞者の目線を意識して工夫してみてください。


展示をする側を体験すると解ること

現場で展示をする側を体験すると解ることがあります。

グループ展や公募展の案内を今まで以上によく読むようになりますし、
当日搬入や展示を誰かに委ねる際は、

 ・作品の裏が展示に耐えられる強度であるか、
 ・留具や掛ひもがついているか、

など、きちんと確認するようになります。

過去の公募展で、展示のお手伝いをしたとき、出品者によって

 ・掛ひもがなかったり、
 ・留具も見当たらなかったり、
 ・展示の指示書もなかったり

と、ずいぶん色々でした。

気づいた人は損なのか?

頼めばやってもらえる人(美術館か企画画廊展示クラスですそれ…)はおそらく一生気づかない作品の裏事情。

気づいた人は損なのか?

まったくそんなことはありません。

わたしは車椅子を使う友人から以前、
「車いすからだと作品の位置が高くて作品が遠くに感じるものもある。」
と嘆かれたり、

小柄のお客さまから
「作品と自分の目線が、照明の反射で見えない箇所が増えることもあるよ。」
と教えてもらったことがありました。

そのたびに「作品をかける高さ」について考えさせられました。

もちろん、お客さんの目線の平均値を参考にしている高さを
「よくない」とは言えません。

作家の考えや意図が、言い方は乱暴だけど
「鑑賞者を選ぶ」作品や展示だってあります。

でも創作を志す者にとってはいい機会なので、作ってからその先にあること、

自分の作品を「見てほしい」となったとき、場所や来場者を想像しながら
「どの高さで絵をかけようか?」
と考えるのは無駄ではないと思います。

みなさん、よい展示を!

制作,鑑賞

Posted by suho