◆版画用紙のオモテとウラ 分かりやすい見分け方教えます
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/HahneMUhLE01.jpg?resize=267%2C361&ssl=1)
見分け方のポイント
表と裏の見分け方のポイントは、以下の2点になる。
・社名やロゴ
・紙の目
銅版画家として、普段、接している紙の「表と裏の見分け方」について、自分の体験を交えながら分かり易く解説する。
ふたたび、悩んでいる
紙には表面と裏面がある。
この場合の「表」とは、
版画の線表現やインクの色を、最適な状態で転写できる面
ということになる。
以前、版画用紙(ハーネミューレ社)の表と裏の見分けかたを調べた話を書いたことがある。
◇紙のオモテとウラを気にするきっかけになった記事はこちら
◆版画用紙「ハーネミューレ紙」 表と裏との闘い
◇「アルシュ紙」の裏と表についてはこちらの記事を
◆版画用紙「アルシュ紙」 オモテとウラの見分け方
購入した版画用紙には、紙の端に会社の紋様だったり、社名などが
ウォーターマーク(透かし)や
エンボス(凹み)
などに加工されている。
透かしや凹みの印を頼りにしながら、素直に表面へ版を印刷すればいい。
しかしである。
版の大きさや、作品に必要な余白に合わせて、版画用紙をカットすることがある。
切り離されれば当然、頼りにしていた透かしの印がない、紙ができあがる。
紋様のウォーターマーク(透かし)もない。
社名のエンボス(凹み)もない。
紙の向きをそろえて重ねたか記憶にない(個人の問題です)。
カットの際、紙の端に鉛筆で小さく印を付けておけば万事解決なのだが、作業が中断して戻ってきたとき、うっかり印を付けるのを忘れていたことに気づく…
ということが私にはたまにある。
たまにというか、よくある。
20代のころは、指先の感触で紙のオモテを確かめることができた。
薄暗い作業室でも、デスクランプへちょっと紙をかざせば、なんとなくわかったものだ。
しかし今は…。
末端冷え性の指先で触っても、紙であるということしかわからない。
視力に至っては、曇りや夜中の作業場のなかでは、どちらもオモテ面に見える。
これはまずい。
自分の手元にある他の版画用紙の表と裏を見分けられるか、まとめてみた。
現在の視力と指先の感覚が心もとないので、ルーペも使うことにした。
見分け方の決め手は「紙の目」
表と裏の見分け方は、
「紙の目を見ればいい。」
学生時代の記憶の中を探ると、教授は確かそう言っていた。
紙の目とは、版画用紙が製紙工場でつくられたときの繊維の加工跡で、布の地模様のようなもの。
表と裏は、地模様が違うから見ればわかるはずだ。
今、近づいて、紙の角度を変えながら面を見てみた。
うーん…夕方以降は心の目で見るしかない(つまり見えない)。
晴れた日の午前中、矯めつ眇めつして見た結果が以下である。
ハーネミューレ(ドイツ)
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まずはドイツのハーネミューレ紙から。
私の手元にあるハーネミューレ紙は
・クリーム色の紙で文字の透かしが入ったもの
・白い紙で紋様の透かしが入っているもの
2種類あった。
文字の透かしが「HAHNEMUHLE」と正しく読める面がオモテ。
クリーム色のハーネミューレの表面をルーペで拡大してみる。
〈表〉
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/d72b9eb409b5068baed57f411a6cddaf.jpg?resize=456%2C356&ssl=1)
〈裏〉
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/34c4283a9a300622de73e68f6011ebcf.jpg?resize=372%2C424&ssl=1)
次に、白色のハーネミューレを見ていく。
こちらは盾を持つ雄鶏の紋様が透かしで入っているのが見える。
以前、ハーネミューレ紙のオモテとウラを調べたことがあった。
最初は安直にネットで検索したのだが、サイトによってオモテとウラの扱いが異なっていた。
最終的に、日本でハーネミューレ版画用紙を取り扱う会社、株式会社オリオンさんへ伺ったところ、
「雄鶏が左を向いているように見えるのがオモテ」
と教えていただいたので、今回はそのように調べていく。
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/d4021be13a115d3954f3734fcd3ca6f7.jpg?resize=346%2C391&ssl=1)
白いタイプのハーネミューレ紙も表と裏を見比べてみる。
〈表〉
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/9857083a623a44cd202e7aa4c050e5ca.jpg?resize=340%2C374&ssl=1)
〈裏〉
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/dd3e83846bfeaf162f0a5af9916ec096.jpg?resize=349%2C373&ssl=1)
表面は繊維が整っていて、裏面は割とモコモコとしていた。
個人的にこう見えた、という表現でハーネミューレ紙の繊維の地模様をかいてみた。
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/fd89847460e35f02fe1f1d3bc1a7446a.jpg?resize=357%2C382&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/9b9c0d4495c008372974ac2251f6d08c.jpg?resize=346%2C421&ssl=1)
わたしの視力(というか画力というか)では、これが限界みたい。
アルデバラン(日本)
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/cc2f72d9f4e318d37881ba557ce610ed.jpg?resize=423%2C258&ssl=1)
アルデバラン紙は日本製の版画用紙。
製造元の株式会社オリオン社は、先に紹介した、ハーネミューレ紙の輸入代理店もしている。
以前、紙の表裏を問い合わせた際、とても丁寧にお返事を下さった。
こちらの紙は「ALDEBARAN」のロゴが紙の端にプレスされている。
文字が正しく読める面がオモテ。
ルーペを使ってみていく。
〈表〉
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/bd9c0c7a2ad7efd5337b8b41920f5964.jpg?resize=322%2C179&ssl=1)
〈裏〉
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/3730c495397c634496427c960fb2ffad.jpg?resize=332%2C258&ssl=1)
アルデバラン紙の繊維の地模様。
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/796e1296be9101ed88ffa1e0b9f66ffa.jpg?resize=317%2C359&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/7807242acbc9fc20ec0472069fbcfe10.jpg?resize=320%2C376&ssl=1)
アルデバラン紙の面は、表も裏もきめ細やかなため、わたしはロゴを頼りにしないと、ほとんど見分けがつかなかった。
手描きの地模様は、かなり大袈裟にかいてある。
BFKリーブ(フランス)
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/BFK.jpg?resize=361%2C247&ssl=1)
会社が合併した今も、その名前が残るフランスのBFKリーブ紙。
「BFK RIVES」「FRANCE」「∞」の透かしが正しく読める方がオモテ。
〈表〉
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〈裏〉
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BFKリーブ紙の繊維の地模様をかいてみた。
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/11394455c1e85fb7548d5592bdb0dc9f.jpg?resize=307%2C372&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/sudohoko.com/wp-content/uploads/2022/02/c2b58be0b228bbc30552499077340e82.jpg?resize=318%2C400&ssl=1)
学生時代に初めて扱った版画紙がBFKリーブだったこともあり、私個人としては比較的、紙の表と裏がわかりやすい紙だと思う。
まとめ
以上、版画用紙の裏と表の見分け方についての解説だった。
ポイントは、「社名やロゴ」と「紙の目」を見ること。
ここでは、自分の感覚を基に説明したが、実際に使う人が自分自身で見て、触ってみることが重要。
紙の表と裏が作品に与える影響は?
そんなに紙のオモテとウラは大事なのかというと、
重要です。
としか言いようがない。
仮に裏面に版を刷ってしまっても、さほど変わりはないかもしれない。
版画用紙の「表」は、製紙会社が、
版画の線表現やインクの色を、刷りあげた際に最適な状態で転写できるように作った面
なので、自分の表現をきちんと刷り上げるために、知っておいて損はないと思う。
紙のオモテとウラを理解して、管理していればいいこともある。
私の場合は、制作中に満足な印刷ができなかったときだ。
失敗の原因を調べたり、画材の工夫をしたりなど、制作の条件を探っていく際、大いに助かる。
それに、紙は貴重品。
何枚も同じものが印刷できる版画だからこそ、一枚を大事に扱いたいと思う。
◇紙のオモテとウラを気にするきっかけになった記事はこちら
◆版画用紙「ハーネミューレ紙」 表と裏との闘い
◇「アルシュ紙」の裏と表についてはこちらの記事を
◆版画用紙「アルシュ紙」 オモテとウラの見分け方
◇版画用紙が気になった方はこちら(大判サイズで購入して自分でカットされる方向け)
・萩原市蔵商店(注文はTEL、FAX、メール対応)
https://www.hanga-hagiwara.co.jp/index.html
・株式会社笹部洋画材店
http://www.sasabegazai.co.jp/index.html
・ゆめ画材
https://www.yumegazai.com/
・文房堂 画材屋さんドットコム
http://www.gazaiyasan.com/
須藤萌子の銅版画、ドローイング作品を紹介するサイトです。こちらもご覧ください。
『須藤萌子 版画とドローイング』
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