◆師匠との3年間 その2「気が楽になった話」
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聞かれたことに答えられない
「どう思う?」と、聞かれて素直に答えられないときがある。
間違っていたり、相手の気分を損ねたりすると恥ずかしいし、取り繕うのが、また面倒くさい。
師匠との会話で最初一番苦しかったのが
聞かれたことに全く答えられなかったこと。
仕事のはなしや、美術のはなし。
簡単な日常生活内のことも。
正解を求められているわけでもない。
考えや思いを話したところで非難されるわけでもない。
それでも。
そのころ私は、
「どう思う?」と聞かれて
「わたしは、こう思う」という簡単な会話ができなくなっていた。
学生のころは、あけっぴろげに喋っていたのに。
講師時代は、あんなにずけずけ喋っていたのに。
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わからないって言ってもいい
毎度毎度、困っていると
〈師匠〉「全部返す必要はない。わからないって言ってもいいんだよ。」
と、言った。
たぶん、もっとスパッとした言い方だったと思う。
〈師匠〉「わからないって言うやつが一番強いんや。」
と、いう言い方の方が、限りなく近い気がする。
えー。
わからないって、言っていいんだ?
目上の人に「わからないです」って言いにくいんですけど。
相手の話をぶった切るみたいできまりが悪いし。
モゴモゴ…
〈師匠〉「んなもん、大丈夫。「今は」分からないです。って言えばいいんよ。」
〈わたし〉「はぁ…(先延ばしってこと?)」
〈師匠〉「相手の聞き方とかもあるけど。」
〈わたし〉「(それが…わからないから…怖いんですが。)」
振り返ると、
知りたいことや、決めたいことを聞いてくる場面で、誠意のある人は、どんな答えでも相手の話をきちんと聞いてくれる耳を持っている。
知りたい、教えてほしいという気持ちで言う「分からないです」は、聞きたくない、興味がない「分からないです」とは違うこと。
だから怖がらなくていいということ。
取り繕いたくて
「知ってます。こういうことですよね?」
と、返して、相手を苦笑いさせていた場面は多かったと思う。
(たぶん、全然「こういうこと」じゃなかった。)
あの時より、ずっと会話が楽になる。
そして、たくさん知ることができて楽しい。
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