◆『川本喜八郎 人形ーこの命あるもの』 別冊太陽 

2021年6月15日

アニメーション作家・人形美術家 川本喜八郎
アニメーション作家・人形美術家 川本喜八郎

子供心をつかんだ人形劇『三国志』

小さい頃、食い入るように見ていたテレビがある。
人形劇『三国志』だ。

それがきっかけで、立派な三国志マニアに…とはならなかった。
ただただ、登場人物と衣装の色合いがキレイで見惚れていた。

「人形なのだけど、生きている。」
「だれかが見えないところで操り動かしているのだけれど、そんなことは気にならない。」

異国の服を纏い、裾を翻して剣を持つ武将にわくわくし、うつむいた顔を、袖に隠して震える女性にため息をついた。

子供向けではなかったと思うが、当時こんなにも子供の心をつかんだのだ。
あの人形劇は、大人たちの度肝をも抜いたに違いない。

そこで使われた人形たちが、川本喜八郎(かわもと きはちろう)作だと教えてくれたのは祖母だった。

三国志の、あの人形たちすごいよね!
諸葛孔明、関羽もカッコいいよね?
宗曹孟徳が好きなの?強そうだなあ。

小学生の私を含め、我が家は一時、三国志フィーバーであった。

そんなフィーバーな夏休み明け、再放送の喜びを語り合える友達がクラスにひとりも居なかった、という悲しさは思い出さないようにしたい。
寂しい小学生時代であった。

その後、20年の時を経て。
美術講師時代に生徒さんと「NHK人形劇・三国志」についてキャッキャできるのは、また別の話である。

「川本喜八郎人形美術館」で孔明と出会う

時は流れ。
10代の頃、長野県飯田市にある「川本喜八郎人形美術館」へ両親が連れて行ってくれた。
テレビよりも間近で見られる、会えることに大興奮した。

今でも覚えている。

三国志の登場人物たちが、ピラミッドのような段に並べられて展示されていた。
だが、当時ぞっこんであった諸葛孔明様の人形が、段のいちばん上…つまり一番遠くの向こうにいたことを。

10代の頃で助かった。
今の視力であったなら、かなり危ない。
諸葛亮公明の概念だけ拝んで帰るところであった。

テレビで見たほうが近いし、動くし、話していたではないか(森本レオの声で)
ああ孔明様、である。
歯がゆく思いつつも、幸せな時間であった。

あの孔明様は今どこに

さらにさらに、時は流れ。
渋谷ヒカリエである。
なんと、「川本喜八郎ギャラリー」があるのだ。

『三国志』『平家物語』の人形を、テーマに応じて40体ほどを展示しているとのこと。
渋谷に行く気力がわいてくるではないか。
各サイトでは、現在どの人形が展示されているか確認できる。

飯田市の美術館、渋谷ヒカリエ、ともに孔明様はご健在
ヒカリエに至っては、孔明は中央角ケースにあることまで記載されている。

もしかしたら、あの日の私みたいな人がいるのかもなあ。

◇川本喜八郎美術館
http://www.kawamoto-iida.com/
長野県飯田市本町1丁目2番地
水曜休館
9:30-18:30/入館は18:00まで
一般:400円

◇川本喜八郎ギャラリー
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/shisetsu/bunka/kihachiro_gallery/index.html
渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ8階 
11:00-19:00/展示替え・年2回
無料

作品ウェブサイト

須藤萌子の銅版画、ドローイング作品、ワークショップイベントを紹介するサイトです。
こちらもご覧ください。
https://sudohoko2016.wixsite.com/sudohoko